ノート・感想・レポートの書き方

講義ノートやレポートの書き方をちゃんと知ってる方はどうも少ないようですので、ちょっとだけ解説。

理系に必要な国語力

 「理系に国語力はいらない」と思ってるヒトは多いようですが、大変な間違いです。 どんな仕事をしても、「ヒトの話から正確に情報を受け取る聞き取り能力」「自分の思ってることを正確に伝える表現力」は不可欠です。 (ついでながら、伝えるべき__「自分の思うこと」が無いのは論外__です)。

 「話せば伝わるやろ」なんて思ってるヒトもよくいますが、それは単なる幻想です。 伝えたいことがある時、言葉にできるのは自分の脳味噌にある情報のごくほんのわずかな断片にすぎません。 そして、その断片を受け取り解釈しようとする他人の脳味噌には、自分とまったく違う知識と思考回路がつまっています。 その他人の脳味噌に「誤解無く自分の言いたいことを解釈」 してもらえるように言葉を発するのは至難のわざです。 というわけで、大学にいるうちに国語力を鍛えておきましょう。

 __「僕は大丈夫」と思ってるヒト__は、以下を読まなくても結構ですが、 国語力に大きな問題があると思われるヒトほど「僕は大丈夫」と思ってるらしいことを書き添えておきます。

ノートの取り方(聞き方の訓練)

 講義のノートをとることが **黒板のハードコピーを作ることと思ってる人は不可です。**新聞記者になったつもりで、 __話していることは全部書き留めるつもり__でひたすら書いてみてください。 実際には一言ももらさず書くのは不可能でしょうから、 何を書き留めるべきか要点をまとめながら書くのがこつです。 このとき書く字数は減らしても、情報の量を減らしてはいけません。 「まとめて書け」と言うと、情報の量を減らしてしまうヒトがほとんどですが、 これは大変な間違いです。 雑談だと思ったことも全部書きましょう。 雑談のように聞こえても、実は大事なことであることは多いものです。 字はきれいである必要はまったくありません。 きれいでも情報のないノートは価値がありません。 (汚くって情報の無いノートはどうしようもありませんが。)

 講義中はいろいろ考えるのでノートをとれないという人がいます。 いろいろ考えても大抵のことは三日もたてば忘れてます。 その上ノートもとってないとなっては、講義中死んでたのと同じことになってしまいます。 考えるのは後でもできますが、ノートは話を聞いてるときしかとれません。 考えたいポイントがあったら、そのことを書き留めておいて、ひたすらノートとり,あとでゆっくり考えましょう。

ビデオ等を見たときにはぼんやり眺めてないで、 __イラスト等も書きながら__ノートを作りましょう。 講義中に書き落としたことは、講義のあとで忘れないうちに補ってください。

一学期おわったら、「一冊の本ができた」と思えるような素晴しいノートを作ってください。

[効能書] 以上のようなノートを心がけると以下の効果が期待できます。

注意力、記憶力、要約力、語彙力,表現力,速書き力の改善・増強

感想やレポートの書き方

 ピカソでもゴーギャンでもゴッホでも、絵を見たらすぐ、「ぁぁ、これは、○○の絵だ」とわかります。 レポートや感想を書くときにはあなたしか書けないもの、言いかえると、 絶対に他人にはまねできないようなものを書くようにしてください。 他の人と同じような文章はいりません。 これは難しいことですが、卒業したら普通に社会から求められることです。 就職するときにも、場合によっては数百倍の競争率の中で就職を決めるには、 他の人と同じ様な作文や面接の受け答えをしていては決まるわけがありません。

 どっかの教科書に載ってるようなお利口さんなレポートや感想である必要はありません。 まずはいろんなことを想像して思いっきり好きなことを書いてみてください。 ただし、相手を説得できる論理性のある文章であることは当然必要です。 論理的な文章を書くには,自分が「なぜこう思うののか」という自己分析がつきまといます。 人を説得する文を書くには,自分を徹底的に分析してください。

 私の講義で「感想」や「レポート」を書いていただいたときには、他の人やどっかのWebページと同じ様なのを出した人はもれなく不可となります。 偶然だろうがなんだろうが、そんなことは関係ありません。 (就職面接だって、本に書いてることそのまま話してるような人は内定もらえません。 全くの偶然でも他社が特許持ってる技術を使っちゃったら、あとでしっかり特許料とられます)。

 細かいことはともかく、一番大事なことは**「レポートを通して、あなたが知的なヒトであることを証明する」**ことです。間違えてもコピー機や検索エンジンのレベルにならないようにしましょう。そのためには,あなたの経験やあなた自身の思いをしっかり語ってください。

レポートの考察の書き方については「特製テキスト集」にある「論文の書き方の掟」も参考にして下さい。

[効能書] 以上のようなレポートを心がけると以下の効果が期待できます。

独創力、想像力、文章力、論理性の改善・増強

リンク集

  • 優勝作品等見ると参考になります。高校生に負けない感想文を書きましょう
  • 文章力は語彙数と高い相関があるそうです。文章力・語彙数を高めるにもたくさん本を読みましょう。

お薦めの本

まずは古典といわれる本をジャンルを問わずたくさん読みましょう。それだけでも正しい日本語を脳に入力できます。

 また、読みやすい文章を書くトレーニングもしておきましょう。以下に文章の書き方の参考書を挙げておきます。ちなみに、大学入試の国語の長文問題は論理力を問うものばかりです。感情移入で解くような問題は出ません。感情移入の仕方はヒトによって違いますから。国語の問題は論理で解けることを理解すれば,大学入試レベルは理系の勉強をしているヒトには何の問題もなくなります。会社等で書く様々な報告書でも論理に気をつけて書くのは大前提です。

文章の書き方の本

  • 古郡廷治著、「論文・レポートのまとめ方」,ちくま新書
    • 気軽に読める本です。論文やレポートを書くための心得や、日本語を書くための文法的注意を例題を交えて書いてあります。はじめて読むときには、「論文の構成」にふれている第2章はとばして読んだほうが読みやすいかも知れません。
  • 八木和久著、「例題で学ぶ原稿の書き方」,米田出版
    • わかりやすい日本語を書くための文法的な注意を詳しく書いています。少し厚いですが、 例題が豊富でわかりやすい本です。
  • 石原千秋著,「大学生の論文執筆法」,ちくま新書
    • 軽妙な語り口で楽しく読める本です。

論理力を鍛える本

  • 野矢茂樹著, 新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ), 産業図書
  • 野矢茂樹著, 「論理トレーニング101題」,産業図書
    • 論理的な文章を書くための文章構成や接続詞の使い方等々が詳しく解説されています。例題形式なので問題集としてもとてもよい本です。